システムズ・エンジニアのキャリアについて考える(第2回)

-55歳からの社長業

55歳で転職した会社は高知の大きな病院の調達会社(いわゆるMS法人)で、年商約3億程度従業員が約50名程度の会社でした。私はそこで約6年間社長を務めるという経験をしたわけです。

もちろん、私が赴任する前から多くの従業員がおり、彼ら・彼女らは既に効率的な仕事の進め方や、最も重要な病院スタッフとのコミュニケーション方法を確立していました。会社はその病院、およびそのグループを顧客としており、経営は安定していました。

私の最初の課題は、「自分に何ができるか?」ということでした。

その結果自分で出した答えは、「決める事、謝る事、IT化促進」でした。

正直な話、日常業務のほとんどは私無しで回ります。というか、私が居たら邪魔になることの方が多い…

ですので、部下ができることは部下に任せて、私は部下の提案や部下だけでは決められない事に対して決定を行う、会社として謝罪が必要になった時に先方に謝る事、そしてこれは自分にしかできないだろうと思ったのが「IT化」でした。

これは自分としては自然な流れでした。

そこからは、ほぼそれ以前の仕事と変わらなく、まずは社内あるいは顧客である病院での業務の「手間のかかる手作業」を見つけるために、業務に関わる色々な方とお話ししました。

そして、どうやったらそれらを短縮化し、その業務に関わる方々が本来の業務に時間を使うことができるかを考え、それを可能にするシステムを見つけ導入、あるいは開発(といっても大げさなものではなく、ほとんどはEXCELのマクロで作った代物ですが…)を繰り返しました。

このような行動の過程で気が付いたのですが、「世の中には、使い易く、安い値段で手に入るツールが山のようにある」という事でした。

このコラムでも何度かこのことに触れましたが、高知のような地方でさらに中小企業となると、このようなことができるスキルと言うか経験を持つ人がほとんどいません。

私は一応社長でしたし、部下もITの事はよく分からないので、私が選ぶツールについて文句を言う人はいませんでした。

ただ、実際に使うとなると、やはり人はなかなか仕事のやり方を変えられません。

例えば今まで、販売管理システムに売上伝票の結果を入力し、そのレポートを紙に印刷し、会計システムにそのレポートを見ながら転記するといった作業をしていた事務処理担当者がいたとします。

そしてその担当者にいきなり別の販売管理システムや会計システムを用意して、「こうすれば事務効率が上がります」といっても、彼らからするとストレス以外の何物でもない状況となる事が往々にしてあります。

なので、例えば今まで通り販売管理システムに伝票入力した後に、その結果をCSVファイルとしてエクスポートし、EXCELマクロを使って会計システムに読めるフォーマットに変換し、それをインポートすることで販売管理への入力から会計システムへの入力の手間を減らすといったように、大枠で今までのやり方を変えず、「少しの手順変更」でその作業時間を短縮するという方法で、皆に使ってもらう事に注力しました。

もちろんこれが正解か否かは分かりませんし、そうでない方法を使うときもありますが、私は「ユーザーになるべく負担をかけないで成果をだす。そしてそれを積み重ねる」こそが、地方でのIT化の促進に大切な事だと思うに至りました。

私にとって幸運だったことは、「勉強する時間があった」という事です。社長業を始めて当初は結構時間に余裕ができました。

それで、その時間を使って自分の見つけたいくつかのツールを自分で使ってみて動作を確認すると言った事に時間を使うことができました。今使っているTableu,kintoneなどはこの時期に出会って勉強したツールです。

社長としての経験を重ねる中で、中学時代の先輩であり高知市内の別の病院事務長との関係が深まり、ある時点で長期の契約を結ぶことができました。これが私のキャリアに新たなターニングポイントをもたらしました。

社長をはじめて5年目の半ばごろから、「やはり自分のやりたいことは社長ではなく、ITエンジニアなのだ」と思うようになりました。

結局その長期契約をたよりに2020年4月のコロナ真っただ中で新しい会社を興して独立しました。

医療業界の「働き方改革」のために…