IT業界のソフトウェアエンジニアの今後について考える(7)
実はこのシリーズは前回で最終回にしようと思っていました。
しかし、どうしても書き残しておきたいことがあると感じ、もう一度だけ付け加えることにしました。
それは、これから先「ソフトウェアエンジニア」という言葉そのものの意味が変わる、あるいはこの名詞自体が使われなくなるのではないか、という点です。
これまでの話を踏まえると、近い将来、私たちのビジネス環境には次のような現象が起こると考えています。
- AIのさらなる発達により、使いやすさと能力が飛躍的に向上する
- カスタムメイドのプログラムが動く多様なデバイス(ロボットを含む)が普及する
- ホワイトカラー・ブルーカラーを問わず、業務の自動化が進む
ソフトウェアエンジニアは、これらの変化が起こる現場で中心的な役割を担うことになります。そして、その活躍によって、こうした現象はさらに加速していくでしょう。
これまで「ソフトウェアエンジニア」という言葉を単純に定義すれば、「プログラムを作り、仕様に従ってシステムを構築する仕事」と言えたと思います。
しかしそれは、いわば “Before AI” の時代の話です。
私たちはすでに “After AI” の世界に入り始めています。
Before AI の時代でも、顧客の開発要件を聞き、それに対して提案を出すというプロセスは存在しました。ですが After AI の世界では、顧客の課題に対する提案が、顧客自身の想像を超えるものになる可能性が高まっています。
なぜなら、ソフトウェアエンジニア(ここではSEやプログラマも含みます)がAIを使い、知識や経験を蓄積し続けることで、「AIを伴走させながら業務を発展させる技術」を身につけ始めているからです。
一方で、AIの普及によって、業務に詳しい担当者の側から、ソフトウェアエンジニアに対して「これまで以上に難しい要求」が出てくる可能性もあります。
こうした状況の中で、これまでソフトウェアエンジニアと呼ばれてきた人々の仕事は、端的に言えば「問題を解決すること」へと収束していくのではないでしょうか。
IT業界は英語の職種名を好みますから、
「プロブレム・ソルバー」
あるいは
「ソリューション・アーキテクト」
といった呼び方に近づいていくのかもしれません。
そして個人的に、ここからがさらに重要だと思っています。
それは、「どこでもソフトウェア」という考え方です。
以前の回で「データ・デモクラシー」という言葉を使いましたが、これからの環境では、私たちを取り巻くありとあらゆるものがソフトウェアによって動くようになります。
すでに誰もが持っているスマートフォンも、カスタムメイドのソフトウェアが動きやすい環境が整うことで、さらに多くの業務の自動化に使われるようになるでしょう。
これは、ソフトウェアを「使う側」がその可能性を理解すること、そして「提供する側」がコスト構造を変えること、この両方がそろって初めて実現します。
これまでは、ソフトウェアによる高度な業務自動化はコストが高く、大企業だけがその恩恵を受けていました。
しかしAIの普及によって、中小企業でも受け入れられる価格でカスタム自動化が提供されるようになれば、ビジネスの可能性は大きく広がります。
一見すると、これは最近よく言われる「クラウドパッケージ」と似ているように見えるかもしれません。
しかし本質的にはまったく異なります。
クラウドパッケージは「共通機能の提供」が中心ですが、ここで起きようとしているのは「顧客ごとの事情に合わせた自動化」が、驚くほど低コストで実現する世界です。
この変化を、業種や業界を問わず、ビジネスに携わる人々が理解し始めたとき――
それは、新しい意味でのソフトウェアエンジニアにとっての「大航海時代」の始まりになるのではないでしょうか。
そして最後に、個人的な話を少しだけ書かせてください。
私は現在、年齢としては決して若いエンジニアではありません。(一昔前なら「じじい」と呼ばれる年です)しかも一人で会社を運営しながら、日々AIを使ってシステムを構築しています。
私はもちろん「コードを書く速さ」や「新しい言語の習熟速度」で若い世代と競うつもりはありません。
むしろ、自分の経験の中で培ってきた「業務の理解」「構成を考える力」「現場の課題を見抜く力」をAIに重ね合わせることで、これまで一人ではできなかったことができるようになってきたと感じています。
ソフトウェアは、特別な人だけが扱うものではなくなりました。
そしてそれを扱うエンジニアも、特別な職業ではなくなっていくのかもしれません。
しかしその一方で、「問題を見つけ」「構造を考え」「解決まで導く人」の価値は、むしろこれからさらに高まるのではないかと思っています。
もしそうであるならば――
これからの時代は、ソフトウェアエンジニアにとって厳しい時代ではなく、
これまでにない自由と可能性が広がる時代なのかもしれません。
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