IT業界のソフトウェアエンジニアの今後について考える(2)

前回は、「エンドユーザーコンピューティング」と呼ばれる流れ、すなわち Excelの関数やマクロを使って、主に事務処理を自動化・効率化していくところまで のお話をしました。
この流れは、その後も止まることなく、むしろどんどん大きくなっていきました。

そして、企業内の組織である情報システム部門も、結果としてこの流れを後押しすることになります。


おそらく(多分ですが)、多くの企業で情報システム部門の業務はすでに手一杯で、「これ以上は面倒を見切れない」という現実があったのではないでしょうか。

一方で、情報システム部門には 企業全体の業務効率化を支援する というミッションもあります。
そう考えると、事務処理の中でも特に属人性の高い業務について、いちいち情報システム部が個別対応するのは難しい、という判断があったとしても不思議ではありません。

さらに大きかったのは、ソフトウェア(特にExcel)の進化 です。
バージョンが上がるごとに、使いやすい機能、便利な機能が次々と追加され、ユーザー側の「できること」も急速に増えていきました。こうした背景が、エンドユーザーコンピューティングを強く後押ししたのだと、私は考えています。

そしてもう一つ重要なのは、
「自分の仕事は経理だ」「人事だ」と考えていた人たちの中に、ソフトウェアを活用すれば、自分の業務を自分で自動化・効率化できる ということに気づいた人が現れ始めた、という点です。
「ソフトウェアを自分の業務に生かすことが、自分自身でできる」
この気づきは、非常に大きかったと思います。

この流れは、次に インターネット(Google)の登場 によって、さらに加速します。
インターネットそのもの、そしてそれを支える技術も、爆発的な発展を遂げました。

この新しい役者の登場によって、現場の担当者ができることは一気に増えました。
日々の業務の中で発生する調べ物を自分で行い、必要なデータをダウンロードし、そのデータをExcelのようなソフトウェアで加工・分析する。
こうした一連の作業が、特別な部署に頼らなくても可能になったのです。

ここで生まれたのが、「属人化した業務自動化」 です。
これまで述べてきたことの多くは、現場の担当者が「自分の仕事を少しでも楽にしたい」「効率を上げたい」と考えた結果として行われたものであり、必ずしも課長や部長、あるいは情報システム部門から指示されたものではありません。

もし企業の中に、このような現場が10か所あれば、担当者も10人いて、それぞれが独自に工夫をします。
当然、業務効率化の内容や手順はバラバラになり、10種類以上の業務自動化 が生まれることになります。

ここまで来ると、以前と比べて「業務効率」は確実に向上したと言えるでしょう。
しかしその一方で、情報システム部門はエンドユーザーコンピューティングの全体像を把握することが難しくなり、現場で使われるIT技術や手順は、ますます多種多様になっていきました。

ここからは、私自身の考え、あるいは仮説になります。
地方の中小企業や病院の経営が厳しくなってきている背景には、この流れに十分に乗れていない という側面があるのではないでしょうか。

ITやインターネット、Excelで関数やマクロを書くことは、それまでそうしたことに触れてこなかった社員にとって、特に年齢が高くなるほど、心理的なハードルが高い傾向があります。

地方の職場では、もともと人手不足で、このような業務を担う余裕がない場合も少なくありません。そこに「難しそう」「面倒そう」というマインドの壁が加わり、外部の開発会社に依頼すれば高額な費用がかかる。


結果として、「仕方がないから今まで通り」という判断を続けてきたケースも多いのではないでしょうか。

その結果、この大きな流れに乗り切れず、組織全体として停滞感が増してしまった――
そんな状況も、決して珍しくないように思います。

あるいは、そのことにすら気づかず、
「前からこうだったから、これからもこのままでいい」
そう考えている組織もあるのかもしれません。

ただし今回のAIの出現については、私は ITエンジニアの役割そのものを大きく変えると同時に、地方の中小企業や、少人数で運営される組織にとっても、この上ない福音になる可能性を感じています。

投稿者プロフィール

柳井康伸

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