AI処理を組み込んだ業務改善(発注書管理)

── 久保熱錬様の事例から**

久保熱錬様の発注書管理システムを開発するにあたり、私自身の原点のようなものを思い出しました。

会社を始める前、私が前職で社長をしていた頃のことです。
当時、社内の伝票処理を何とか簡単にできないかと、日々悩んでいました。OCR製品もいくつか調べましたが、設定が煩雑で、正社員6名ほどの小さな会社ではとても使いこなせるとは思えませんでした。結局その時は導入を断念しました。


■ AIを試し始めたきっかけ

そもそも私がAIを触り始めた理由も、
「請求書の自動読み取りができないか」
という思いからでした。

数ヶ月試行錯誤を繰り返しながら、Google社 Document AI の OCR と ChatGPT の API を組み合わせてみたところ、「これは実用レベルに近い」と感じる場面が増え、AIの凄さを実感し始めました。

Document AI には種類が複数あり料金も様々ですが、今回使った Document OCR は最も安価な代わりに、機能はシンプルで“文字列の塊を取り出すだけ”のサービスです。

しかし、この「単純な文字列抽出」と ChatGPT を組み合わせることで、伝票に書かれている数字や項目に 意味(タグ)を付けられる ようになったのです。


■ AIが何を可能にしたのか?

例えば請求書に

  • 単価:500円
  • 個数:10
  • 小計:5,000円
  • 消費税:500円

とあったとします。

Document OCR は
「500」「10」「5000」「500」
という“数字の羅列”として取り出してくれますが、これだけでは何が単価で、何が税額かまったく分かりません。
プログラムも処理のしようがありません。

ところが ChatGPT にかけると、

  • 単価 → 500
  • 個数 → 10
  • 小計 → 5,000
  • 消費税 → 500

といった具合に、それぞれの数字に**意味付け(タグ付け)**ができるようになります。
この精度が、実務に十分耐えうるレベルに近づいたことが、大きな転換点でした。


久保熱錬様で取り組んだ自動化

久保熱錬様の事例では、紙で送られてくる発注書をスキャナーで読み取り、

  1. Google Document OCR → 文字抽出
  2. ChatGPT → タグ付け
  3. 販売管理システムに取り込める形式のデータを自動生成

という流れを構築。
これが今回のシステムの大きなポイントでした。


とはいえ、AIは“100%正確”ではない

ただし、当時のAIのタグ付け精度は 100% ではありませんでした。
どんなにプロンプトを調整しても、どうしても“間違い”が発生します。
肌感覚では 正答率90%前後 という印象でした。

そこで、久保熱錬様の実際の発注書を数種類お借りし、プロトタイプを動かして確認していただいた上で開発に着手しました。

今もそうですが、AIの結果には必ず“人間によるチェック”が必要です。
世の中には「100%でなければ使えない」という経営者の方もいらっしゃいますが、現実にはそこまで完璧なAIはまだ存在しません。(個人的には、100%のAIが生まれた方が少し怖い気もします…)


開発にあたり重要だった2つの工夫

1. 顧客ごとのプロンプトを個別に作成

発注書のフォーマットは顧客ごとにバラバラです。
より正確に読み取るため、この時は 約15社分のプロンプトを個別に用意 し、会社ごとに最適なタグ付けを行いました。

2. 顧客名の「名寄せ」

伝票上の顧客名と販売管理システム内の顧客名が異なることはよくあります。
そのため、顧客マスターを使って
「OCR+AIの読み取り結果 → 販売管理システムの正式名称」
の対応表を作成し、自動で名寄せできるようにしました。


その結果、業務はこう変わった

お客様から見ると、

  • 発注書をスキャンする
  • そのまま販売管理システムに取り込めるデータが自動で作られる

という“入力作業そのものが消える流れ”が実現しました。

AIにすべてを任せるのではなく、
AIが得意な部分を最大限活用し、
人間のチェックを必要最小限に抑える。

このバランスがうまくハマった事例でした。

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